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第1回会話教育のための講演会・報告3

渡辺素和子先生「談話分析とOPI−その接点」

レポーター 宮瀬 真理

 宇佐美まゆみ先生の講演に引き続き、渡辺素和子先生の講演が「談話分析とOPI−その接点」との題で行なわれた。

 まずはじめに、談話分析とは、1.あるコンテクストの中で起こった会話や物語を 2.記録しやすい対象に変化させ(文字化し) 3.それを分析するもの であり、OPIとは 1.インタビューというコンテクストの中で起こった発話を 2.テープに記録し 3.それを評価するもの であるということから、まさにOPIは談話分析の対象となる資料を提供するものであると述べられた。

 そして、OPIを分析資料とした研究が紹介された。

 会話である程度の量を話していても、文がプチプチと細切れになってまとまりがなくなっている発話や、文法的には大きな間違いがなくても意味がわかりにくい発話があることから、この研究は結束性と首尾一貫性(コヒアランス)=「…話し手と聞き手、書き手と読み手の間で前提となる知識や話し手の意図、聞き手の類推を考慮に入れて理解していくのに必要な解釈上の一貫性を指す」(メイナード泉子 1997)をキーワードとして捉えている。

 中級上から超級の五つのレベル、各レベル3本の計15本のインタビュー中、レベルチェック・突き上げ部分における返答の部分を調査対象とし、文法でいうところの述部の終わりに来ることのできる言語要素であるプレディケイト(verbal, adjectival, nominal + copula の三種類がある)、終助詞、接続詞を調査単位として分析した。プレディケイトは

 [使えない]って言ってました  
 [明日行く]って話 

の[ ]内のようなEmbedded(中に組み込まれている)プレディケイトと 下線部のような Non-embedded(組み込まれていない)プレディケイトの二つに分けられる。

 主な分析結果として、

・レベルが上がるに従って、Embedded プレディケイトの中の、上に例にあげたような て/と で受ける形のものが増えている(Embeddedプレディケイトのその他の種類としては 〜と思う、修飾節、疑問文節がある)
・Non-embeddedプレディケイトについては、終止形のみを用いた割合がレベルが上がるに従って減り、終止形で言い切らないで終助詞や けど/が を用いて発話を終る割合が増えている
・接続詞の数はレベルとはあまり関係がない
ことなどがあげられた。また、結束性の要素はあるものの、誤用されたため首尾一貫性に欠けるといった実例も検証した。(研究の話しことばと書きことばの部分の紹介は時間の都合で省略された)

 最後にまとめとして

(1)接続詞だけではOPIの中のテキスト判定に役立たない
(2)結束性だけでは不十分。全体のコヒアランスがなければならない。
(3)結束性とコヒアランスは成否判定ではなく程度判定をするべき。
(4)コヒアランスは聞き手の解釈能力と姿勢によって達成できてしまうので、テスターは主要レベル毎に標準を対象レベルに合わせる必要がある

と研究から示唆されることが述べられ、結束性とコヒアランスの研究がOPIに重要な意義を持つことが示された。

 また、この研究が会話教育へ示唆することとして

(1)聴解の教材に 体験談などの長い談話を取り入れ、母語話者がどのように談話をつなげているのか、談話の構成を示すような指導をする
(2)「て形」と「んです」の組み合わせの会話練習を取り入れる
(3)「〜というX」の様々な使用方法を示し、練習する
(4)作文に基づいた発話の練習という方法を見直す
(5)書きことばが化石化していないか点検
(6)日本語では対人的に話すという行為はただ情報や思考を言語化するだけの行為にはとどまらず、言語化したものを相手に「提出・提示」するという行為をさらに言語化する必要がある

ことがあげられた。

 渡辺先生の講演では、談話研究がOPIと日本語教育にどう生かされるかが具体的にわかりやすく述べられていて、OPIテスターにとっても非テスターにとっても大変有意義なものであった。