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エディンバラOPIシンポジウムの報告2

トレーナー全員によるパネルセッション

レポーター 遠藤 藍子

 シンポジウムの目玉―6人のトレーナーが一堂に介してのパネルセッションは、両日共中身が濃く、かつ和気藹々と自由に話し合う雰囲気に充ち、終了時間が惜しまれる程盛り上がった。その全容をお伝えすることはとても叶わないが、かいつまんでのご紹介をさせていただく。なお、筆者は敬語使用面では「超級」と自認しているが、繁雑さを避けるため敢えて敬語不使用で御報告いたすことをお許し願いたい。

第一日目:テーマ「技術と応用」

 トップバッターの三浦謙一氏は「するべきこと・してはいけないこと」の題で、つい忘れがちなdos、犯しがちなdon'tsを表にまとめて発表し、テスターの意識をリフレッシュさせた。

 齋藤眞理子氏の「超級レベルのロールプレイ」では、まず超級向けのロールプレイ・カードの日本語版と英語版ではタスクにかなりの違いがあることをカードを対照させて明らかにした。次いで、和文のカードには「上司に禁煙を進言する」のような、日本社会に馴染んだ被験者ほど抵抗を覚えそうなタスクが含まれていること等を指摘。また、1つの状況で被験者のロールを変えずに効率よく敬体と常体を抽出する場面展開例も複数紹介された

 次の渡辺素和子氏の「トリプルパンチのテクニック」では、超級だけでなく上級でも、3段階に分けて徐々に叙述引き出す手法としてトリプルパンチの概念が有効であることが具体的な質問例を加えながら示された。また、いわゆる超級のトリプルパンチについては、仮説を引き出すための「もし〜たらどうですか」の問が往々にして一文で答えられてしまって空振りに終わる理由と、その具体的な対処法等の紹介があった。

 ラストバッターの鎌田修氏は「被験者へのフィードバック」の題で、京都外国語大学で使用されているフィードバック・シート例等を提示しながら、被験者へのフィードバックのあり方は、今後さらに探求していく必要性を訴え、課題として一同に託した。

 以上のトレーナーの発表に加え、当初2日目のセッションに参加予定だったACTFL ディレクター、Swender氏がスケジュールの都合で急遽参加。「主要境界レベルでのレーティングのバラツキ」の題で判定の心構えを語った。

 初日の最後は、フィードバックへの被験者の反応はどうか、被験者にテスト・テープを渡すことの是非、テストのスクリプトを作る際に非言語要素の扱い方、その他種々のトピックで、壇上・フロアが一体となって質疑応答、コメント、助言がなされ、有益な意見交換の場となった。

第二日目:テーマ「理論と解釈」

 トップの牧野成一氏は「マニュアルとガイドラインの解釈」と題して、氏独自のマニュアルの読み込みと論点を披露。まず、主要境界線を越えて隣接するレベルの判定を確実にする為に、主要境界線を1つ飛び越えたレベルへの突き上げ実施を提唱。「初級-上」か「中級-下」かを見極めるのに上級への突き上げを行う、というのがその例である。次に、超級のロールプレイでは話法のチェックをするべきだと主張。第三は、目の敵にされがちないわゆるオハコの話の扱いについてで、超級話者に限っては専門についてどれだけ話せるかが試せるし、被験者に心理的な安心感をもたらす、としてその効用をと主張。続くトピックはロールプレイ。超級では最低2つのロールプレイが必要であること、文化と抱き合わせた形でのロールプレイの実施の検討が望まれること、日本語を日本人だけのものでなく共通語化していくことを考え、テスターのロールは日本人に固定しないこと、の3点を主張。最後に、OPIの日本語教育への波及効果に言及し、コース・ゴールの設定が可能になる、教室内で突き上げのテクニックを応用して学習者に深く話させるようにもっていける等の例をあげた。

 以上の氏の発言を受け、日本語は間接話法の文法処理よりも場面処理や語彙選択の面で直接話法の引用の方が難問であるという指摘や、文化面の評価方法、テスターに求められる演技力、助け船の出し方等、ロールプレイを中心にフロアと壇上の間の質疑応答・意見交換が活発に行われた。

 次の山内博之氏は「新旧ガイドラインの違いについて」の題で、「新ガイドラインの上級-下」と「旧ガイドラインの上級」の記述を丁寧に比較対照しながら、「新ガイドラインの上級-下」には「旧ガイドラインの上級」よりも否定的記述が多く、ややもするとレベルが低く感じられること、それが「中級-上」との区別をつけにくくしている一因であること等を指摘。

 なお、それに続く質疑応答では、新旧のガイドラインで、上級の下位レベルがお互いにどう対応しているかについては、トレーナー間に見解の不一致が見られた。

 最後に、齋藤、渡辺両氏が共同で「超級レベルの判定」を発表。齋藤氏はマニュアルに沿って超級レベルの規定内容を確認した後、テスターが判定に戸惑うケースとして、タスク面等では超級に達していても、何か感じが悪い、話が回りくどい、意見が借り物に終始する等の例を紹介。渡辺氏は、マニュアルにある超級を規定している用語、例えば「パターン化された基本構文について誤りがない」という場合の「基本構文」や「パターン化」等の内容がどう規定されるのか、裏付けや社会的適切さはどう測るべきか、文化を測る基準は何か等、超級に関わる種々の論点(問題点)を提示。さらにロールプレイの設定 の甘さも指摘した。

 最終の質疑応答コーナーでは、敬体(フォーマル)・常体(インフォーマル)の扱いをめぐって熱い論議が交わされた。この敬体・常体の問題は、日本語の特殊事情を反映したものであるが、今後マニュアルにこうしたlanguage specificなものを取り込んでいけるかどうかは今のところ明らかではない。が、これは発話抽出の手続き、レベル判定、双方に関わる重要課題であることから、トレーナー間の見解を早急に統一し、覚書の形ででも文書化しておく必要性が叫ばれた。今後の進展が注目される。

 以上、駆け足での紹介であったが、参加されなかった方々に僅かでも会場の雰囲気を感じていただけたら幸いである。