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第4回OPI国際シンポジウム:ベルリン 【報告3】

セミナールーム1.2については、8月24日〜26日の三日間に渡って、計7つの発表が行われた。以下、発表の概要を報告する。

セミナールーム1 報告

赤木 美香

8月24日(木)

「日本語能力試験 can-do-statement(施行版)のIRT尺度化と日本語能力検定試験の得点段階との対応付けの試み1/3」
野口博之、熊谷隆一、大隈敦子、石毛順子、長沼君主

■ 25、26日ともにポスターセッション(1/3,2/3,3/3)は同じ内容でした。25日の野口氏のPD(パネルディスカッション)の内容をもとに、より詳しく、またインターラクティヴに行われました。

  これまでの日本語能力試験では、各級に相当する日本語能力について、can-do-statement(なにができるのか)で表現されたものは存在しておらず、また素点から生じる試験結果は、受験者が具体的に日本語で何が出来るのかを示すものはないという問題点が指摘される。そこで、この問題点を改善し、発展させていくために次のような取り組みが行われている。

1.日本語の能力試験の4つの級を1つの尺度に載せる(級間等化)
2.モニター試験受験結果の能力水準と、各statementについての、学習者自己評価を対応付ける
3.各statementについて教師の評価を調査する
4.各statementについての実際の言語場面での使用・接触頻度調査を行い、汎用性を裏づける資料とする
5.国際的な他の外国語能力基準との対応付けに努める

  これらのなかで、まず、日本語能力試験の中のcan-do-statementを作成し、学習者に対して、「@聞く、A話す、B読む、C書く」についてそれぞれ20項目全80項目のstatementについて5段階でアンケートをとった。約1000人の結果よりCEFRの得点解釈基準と対応付け、データを比較検討することを試みると、日本語とCEFRとの解釈基準を1つに出来ない例が見て取れた。この結果より、日本語の場合、CEFRで想定されている欧州系言語間での共通性に比べて、欧州系言語との共通性の度合いが低い、そのため、日本語能力試験の得点解釈基準に関しても、CEFRに対応付けられる能力記述とそうでない能力記述とがあることが明らかになった。これをもとに日本語能力試験の能力基準を考えると、「漢字力」の定義を明確にする必要があるといえる。同様に、口頭能力測定に関しても、ACTFL基準の「話す」「聞く」の能力基準を総合したコミュニケーション能力を測定するCEFRやACTFL能力基準にない日本語独自の基準の設定が必要なるとされた。さらに、今後開発研究を進めながら、世界の諸外国語試験に肩を並べる日本語能力試験の開発を進めていかなければならないと結ばれた。

(赤木美香記)

8月26日(土)

OPIデータを用いた日本留学による日本語習得の測定: 文構造の複雑さ、流暢さ、モダリティ・マーカーの使用
岩崎典子(カリフォルニア大学(デービス))・渡辺素和子(ポートランド州立大学)

  OPIは、よく留学による言語習得の測定に用いられるが、言語の多岐面を統合するOPIの一括的な判定は、言語習得の精確な発達を明らかにはしない(Freed 1998等)。しかし、OPIから得られるデータを細かく分析することによって、留学での言語習得を詳細に理解することは可能であるとし、研究では、5人のアメリカ人留学生が1年間日本への留学する前と後にOPIを実施し、その発話をOPI判定、文構造の複雑さ、流暢さ、モダリティ・マーカーの使用の点から分析を行った。

  その結果、留学後では、全員流暢さには、伸びが見られた。また、モダリティー@命題・事実に対する話者の認識・推量を表すA終助詞とそれに順ずるにモダリティBけどCその他(疑問詞、意志を表す、疑問符的イントネーション、引用など)に関しては量的な変化はさほど見られなかったが、「けど」の使い方の多様性にみられるような質的向上は見られた。留学前後でレベルの成果の違いが見られた例としては、「認識モダリティと終助詞の使用」ね、よ、よね、とか、みたいな、っけ、じゃないか、かね、かな があげられた。留学の成果の評価は、OPIの初級〜超級の判定に依存せず、OPIのデータを生かした評価の目的にふさわしい分析をすることが有意義なようであると結んだ。

(赤木美香記)

日韓高校生の日本文化の捕らえ方とOPIにおける非言語構造
山根智恵(山陽学園大学)・難波 愛(同)・奥山洋子(韓国同徳女子大学)

 近年、初等・中等教育での日本語学習者数は、増加しており、2003年で230万人中153万人と全体の64.3%を占めるほどになっている。そこで、高校生への日本語教育の目的は、自国の文化を大切にしながらも日本の文化に親しむという異文化理解があげられる。

  そこで、この研究では1.異文化理解のための効果的な日本文化学習方法への提言2.日本文化能力測定方法への提言(非言語行動)を目的に掲げ、日本人高校生142名、韓国人高校生64名の(高校1〜3年生)を対象にアンケート調査を行った。(アンケート項目として日本らしさ、日本文化らしさ、学習希望項目をあげ、さらに細かな選択肢を示した。)

  その結果、韓国人が日本らしさを感じるものとしては、「現代的: アニメ・マンガ」、日本文化らしさとして「現代的: アニメ・マンガ」、学習希望項目としては、「現代的: アニメ・マンガ、科学技術のほか、言語(日本語)、社会・民族性(礼儀正しさ)など、日本人学生の結果が「伝統的」項目をあげることに対して異なる結果が見られた。これより、韓国人は、現代日本と現代日本語及び日本人の民族性に興味を持つと見て取れる。そこで、この結果をもとにして、現代の日本文化らしさと礼儀正しさが表れる非言語行動(首の動き、手の動き、対人空間距離)に注目し、日本人、韓国人それぞれ4名にRPをしたときの結果についてデータを収集した。

  その結果、非言語行動として日本人は首の縦振りで共和→共話を示すことに対し、韓国人は、距離を縮めるといった空間距離で共和を示すとされる。また、日本人は、手の動きに礼儀正しさを表すことが多いのに対して、韓国人は、手の動きでは礼儀正しさを表すことが少ないことがあげられた。

  結論として、1、高校教科書のシラバスの文化項目再考、日本の伝統的な文化のみならず、現代的文化及び学習者の慣習(非言語行動を含む)と対照させた項目の作成が必要であること 2、文化能力測定のためには、非言語行動を基準に入れる必要があると結ばれた。

  また、なぜ非言語行動に着目されたかというと、文化能力について測定する場合、あるいは文化の違いについて気付かせる場合、言語行動のみではなく、非言語行動についても分析する必要がある。つまり言語を学ぶことが「異文化理解」の一つの手段だとすれば、言語行動だけでなく非言語行動も視野にいれることによって、より「異文化理解」の習得状況が明らかになる(あるいは文化の違いに気付いているかどうかを測る目安となる)ということからであるとされた。

(赤木美香記)