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第4回OPI国際シンポジウム:ベルリン 【報告4】

セミナールーム1.2については、8月24日〜26日の三日間に渡って、計7つの発表が行われた。以下、発表の概要を報告する。

セミナールーム2 報告

浦上 信子

母語話者テスターと非母語話者テスターのプラスとマイナス
Kiril Radev(ブルガリア・ソフィア大学)

1.日本語OPIは普及しているが、非母語話者テスターが少ない理由は、高い言語能力やそれ以外の要素の必要性、外国で非母語話者教師がOPIの実用性を実感していないことなどである。

2.母語話者テスターと非母語話者テスターのプラスとマイナス
・母語話者は言語の問題が無いため、OPIの内容に集中でき自由に突き上げができる。間違いや不適切な表現にすぐ気がつく。 しかし非母語話者の表現の習得し易さ/難しさなどが理解できない場合や、機能・タスクを重視し、正確さを軽視しがちなテスターが少なくない。
・非母語話者は被験者の経験が理解できるので、異なる見方の判定ができ、困難要素が捉えられ、言語能力と文化能力による挫折が区別できる。しかし言語運用の問題から内容だけに集中できない場合もあり、時に高いレベルの突き上げに問題が出る。テスターと被験者が非母語話者で不自然な感じを持つ場合もある。

3.OPIへの疑問点と改善への提言
・判定にタスクの達成度が最重要視されるが、正確さや質を重要視するべきである。
・言語的挫折は言語的なのか、理由を考えるべきである。
・被験者の背景や環境などを考慮し、適切なタスクを考えるべきである。
・言語能力と文化能力の捉え方が判定基準に影響していないか。

4.結論
・非母語話者テスターの長所を考えると、より多くの超級話者をテスターに育てるべきである。
・非母語話者テスターならではの優位な点は、判定に内側からの観点を持てること。
・被験者とテスター両経験のある非母語話者が、OPI判定基準の欠点を見直せる。

(浦上信子記)

(なお、Kiril Radev氏は去る9月22日、不慮の事故により逝去されました。 心より御冥福をお祈りいたします。)

外国人の語りに見られる参加の軌跡― 少数派在日外国人の学びのネットワーキング
森下雅子(早稲田大学)

  在日少数派外国人が社会に適応するために日本語や生活情報をどのように習得し、ネットワークを構築しているかを観察や質問などにより調査研究をし、支援の仕方を考えるものである。比較対象として黒須正明氏研究の「外国人の語りに見られる参加の軌跡(2)−多数派在日外国人の学びのネットワーキング」(ポスター発表)が用いられた。

  調査対象は、横浜在住の国籍(パキスタン、イラン等)も職業も多様な9名で、在住期間は10年以上。母語での情報は殆どなく、教育機関での学習を受けていないという背景を持つ。

  調査の結果、彼らが自立的積極的学習をし、学びのネットワークを作っていることが分かった。日本人を招待、国際パーティーへの参加、メディアの利用、機会を見つけての会話、ボランティア活動などである。その結果、日本語は生活直結の会話習得に優れ、読み書きはあまり習得していない傾向があった。また問題解決は自分で当たり、その経験から他の外国人を支援したいと考えている。行政から彼らの母語でのサービスが殆ど無く、学習支援は上級への対応が少いが、外国人に対応する土壌は整いつつあるようだ。

  比較対象としてのブラジル人社会は、来日の目的が数年間労働での収入獲得で、多数在住であるから日本社会への順応の必要性が少なく、母語の情報が豊富で、自国同様の生活環境も整っているため日本語学習の動機が少ない。そのため日本人社会と離れ、共生の場の構築が困難である。

  今後の課題は、少数派在日外国人の学びのリソースや順応の仕方、抱えている問題をもっと知って、一方的支援でなく共に街づくりする仲間としての関係構築を図りたい。多数在住派外国人には、彼らが何らかの視点で地域にかかわりあえるような支援をしたい。

  会場から「日本人側のアンケートもとって地域住民の変化などを調べたらどうか」や「二つの調査対象を同じ在住期間で調べたらどうか」という発言があった。

(浦上信子記)

『漢字脳化』から始まる日本語プロフィシェンシー教育
山田ボヒネック頼子(ベルリン自由大学)

  この研究は従来の漢字を一つずつ覚えていく学習に疑問を感じた山田氏他の学習法の改革であり、非常に興味深いものであった。

  非漢字圏の学習者が漢字習得をする場合、中国人のような脳内の識字力を持っていれば漢字学習は速いのではないかという考えから、「漢字脳化」させる方法が考えられた。語彙の半数以上を占める漢語を音調化して聞き分ける能力も養えれば、さらに効果があると思われる。脳内の識字能力が養われれば、日本語の特殊性や他言語との比較不可能といった従来の考えは無意味になると考えられる。

  今までの漢字学習は「半漢盲育成型」とでも言えるが、これは日本語教育を国語教育と混同していること(教育の未開発性)、1945文字の常用漢字教育でなく語彙教育に広げていること(多くなりすぎている)、学習の脳内機能の未解明などに原因があると考えている。

  新しい4つの教え方は1)KanjiKreativ(KK)の採用、2)文字教育の理念→学習者の脳を漢字圏化する、3)漢字の文脈化、4)認知的内省→漢字で分節化しながら読む、が考えられる。

KanjiKreativ(KK)とは

  ステップ1は原子学習。1945の常用漢字を基盤コーパスとし、280の漢字原子を抽出し、12領域に分けその学習を出発点とする。基礎語彙的表現を漢字パーツとして、形態と意味のみを全部頭にいれる。漢字パーツは全部知っているという脳内状態にする。1語ずつ覚えるのとはまったく違った取り組みとなる。

  ステップ2は増分・追加・漸進的学習。既習漢字原子に新しい原子を足していき、意味を持つ分子として音韻的要素と意味的要素がより体得できるようになる。

  ベルリン区域で既にこの方法が実施され、肯定的結果が得られているそうである。

(浦上信子記)

言語教育プログラム改革におけるCEFRとOPI― 日本の一大学における到達度評価制度からテスティング開発への実践研究
真嶋潤子(大阪外国語大学)

1.背景と目的
大阪外国語大学では言語教育プログラム改革の必要性(今回はマクロの視点での)を背景としてCEFRを参照にした到達度評価制度を構築することになった。

2.現状と問題点
大学は25専攻語の少人数教育を提供しているが、各専攻語コースが孤立して、専攻語プログラムの方向性や目標が見えず不透明であり、言語間の比較も難しい。

3.言語教育プログラム改革の方法
現状打破のために、共通性と透明性をキーワードにしているCEFRの枠組みを活用し、到達度評価制度を設立しようとした。専攻語ごとに理想ではなく現実的な到達度目標をCEFRを利用して記述してもらい、全専攻語の目標を把握する。
記述方法は4年間一貫の教育を考え、各学年の到達度目標を設定する、専攻語全体として到達度を考える、4技能別5項目を記載する、専攻語の特性を反映させる、言語使用能力全般を見る、「〜ができる」型の記述をする等の留意・合意事項がある。

4.改革の結果
25言語の到達度目標記述を公開でき、「透明性」「共通性」「押し付けない」CEFRの特徴を持ち、社会的に説明責任のもてるものができた。又自立的学習を促進するものとなった。

5.今後の課題
・提出された到達度目標が適切か確認と改訂をする
・学生の言語能力への教育的効果があるか
・評価法・テスティングの開発をする
・各言語の標準テスト・検定試験を調査し、それと関連付ける
・CEFRを利用したことへの評価をみる

(浦上信子記)