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第6回OPI国際シンポジウム:京都

基調講演: 「第二言語で話すということ:言語運用力とコミュニケーション」
鳥飼玖美子氏(立教大学)

報告: 野原 ゆかり

 初日の基調講演は、開会式での、近年OPI実施件数が増えているという現状報告を受け、その背景には最近の日本の英語教育の動向が関係しているのではという興味深い話から始まった。

  はじめに、日本の英語教育における言語政策の経緯や方向性に関する説明があり、一般社会において「英語力」とはコミュニケーションを目的とした英語運用能力を指していると述べた。続いて、そのような社会の動きが学校現場に及ぼす影響として、高校におけるSELHi(Super English Language High School)の例が紹介された後、大学での試みに言及し、大学で求められるのはオーラルな言語運用能力であると指摘した。そして、このような国内の現状を踏まえた上で、一般で言われている「コミュニケーション」を明らかにする必要があると強調し、この後、第二言語の運用力を「コミュニケーション」という視点から説明した。

  まず、コミュニケーションは英語だけではないとして、言語の多様性、母語でのコミュニケーション能力についての考えを述べた。そして、「コミュニケーション」に関するこれまでの多様な見解をBakhtinやGoffmanの考えを中心に紹介し、「コミュニケーション能力」とは何かという問題を提起した。それに対し、Canaleのモデルと、それを発展させたBachmanのモデルを提示し、Bachmanのモデルに関しては、異文化コミュニケーションにおける文化的コンテクストの必要性を述べた。最後に、今後の課題として、BachmanとPalmerが提案した言語テストの要素を取り上げ、インタビューという人工的な場で、どれほど「正当性(authenticity)」や「相互性(interactiveness)」が測れるのかという批判を紹介し、コミュニケーション能力の測定は一筋縄ではいかないことを改めて強調した。しかしながら、社会も学習者もそれを求めていると述べ、そのニーズに応えるためには語用論や社会学などの学際的な知見を取り入れた研究が必要であるとして講演を締め括った。

  90分間の講演は言語教育に携わる者、またそれを目指す者にとって、「コミュニケーション能力」を再考する大変意義深いものであった。

(野原ゆかり 記)

<出典>
Bachman, L.F. (1990). Fundamental considerations in language testing. Oxford: Oxford University Press.
Bachman, L.F., & Palmer, A.S. (1996). Language testing in practice: Designing and developing useful language tests. Oxford: Oxford University Press.
Bakhtin, M.M. (1981). The dialogic imagination (C. Emerson & M. Holoquist, Trans.).Austin, TX: University of Texas Press.
Canale, M. (1983).From communicative competence to language pedagogy. In J. Richards & R. Schmidt (Eds.), Language and communication (pp.2-27 ). London: Longman.
Goffman, E. (1981). Forms of talk. Philadelphia: University of Pennsylvania Press.

<鳥飼氏よりコメント>

論文でしか知らなかったOPIについて、シンポジウムで多様な視点から学べたことを感謝しております。特に、インタビュー方法についての説明を受けた後、実際のインタビューのデモンストレーションを見ることができたことは、非常に参考になりました。
<話す能力>の測定について、proficiency, communicative competence の関連とあわせて、私なりに今後も考えてみたいと思います。貴重な機会を与えていただきましたことをお礼申し上げます。