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第6回OPI国際シンポジウム:京都

パネルディスカッション I: 第二言語教育におけるプロフィシェンシー

司会/報告:迫田久美子(広島大学)

鎌田修(南山大学)「ACTFL-OPI におけるプロフィシェンシー」
根岸雅史(東京外国語大学)「英語教育におけるプロフィシェンシー」
エレン・ナカミズ(京都外国語大学)「ブラジルポルトガル語と会話能力測定」(クラウディ オ・ヴァスコンセロス氏代読)
山田ボヒネック頼子(ベルリン自由大学)「CEFR(欧州言語共通枠組み)に見るプロフィシェンシー」

 今回の国際シンポジウムは、外国語教育にとっての永遠のテーマである「プロフィシェンシー」が取り上げられた。第1パネルでは、日本語以外の様々な外国語のテスティングに関わる専門家から第二言語としてのプロフィシェンシーとは何か、あるいは何を測定しようとしているのかに焦点を当てて、その実体を探るべく議論を開始した。

  南山大学の鎌田氏は、ACTFL-OPIの発生経緯を紹介しながら、その根幹をなすプロフィシェンシーを「実生活における種々の言語活動の総合的遂行能力」と規定し、OPIでは正確さだけでなく、機能や場面など、多面的な要素からプロフィシェンシーを捉えていることを報告した。また同時に、OPIのテスト場面が固定されている制約から起きる問題点などの指摘もなされた。

  ベルリン自由大学の山田氏は、CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching assessment: ヨーロッパ言語共通参照枠組み:学習・教授・評価)に基づき、プロフィシェンシーを「ある状況下で課題を遂行する能力(タスク遂行能力)」と捉え、その中核に据えられる「複言語力(plurilingual:複数の言語で他者と交流できる能力)」という新たな概念を紹介した。

  京都外国語大学のナカミズ氏は、ポルトガル語検定試験から具体的な試験問題を提示しながらプロフィシェンシーの捉え方を報告した。ナカミズ氏は「日常生活で遭遇する場面に応じた適切な言語運用力である」と紹介し、同時に検定試験で求められる運用力と教育現場のカリキュラム、伝統的な指導方法とのギャップなどの問題点も指摘した。

  最後のパネリスト、東京外国語大学の根岸氏は、英語教育の領域から具体的なテストを分析しながら、プロフィシェンシーの拡大版と限定版の2つの捉え方を示した。前者は実際のコミュニケーションに関わる多面的で包括的な能力、後者は言語使用の根底に存在する核となる能力である。いずれも利点と欠点があり、テスト作成や評価の際にはどちらの立場を取るかの決断が迫られると述べた。

  4人のパネリストの発表後は、フロアから質問や意見交換がなされ、具体的な評価法や試験問題など、外国語におけるプロフィシェンシーの捉え方への関心の高さがうかがえた。

  第1パネルディスカッションを通して、プロフィシェンシーのテスティングが「わかる」ではなく「できる」能力である「タスク遂行能力」、つまり拡大版を評価する方向に進んでいるという傾向が示された。しかし、そこには様々な問題点が潜んでおり、問い直す必要があることも述べられた。プロフィシェンシーの捉え方によって、テストや評価も変化し、教育現場の指導も変革が求められる。今回のパネルが発火点となって、この問題が聖火のように受け継がれ、今後さらなる議論を呼ぶことを期待して、4人の健脚の聖火ランナーに感謝する。

(迫田久美子 記)