トップページ日本語OPI 研究会の活動OPI国際シンポジウム>第6回OPI国際シンポジウム:京都 研究発表3

 

第6回OPI国際シンポジウム:京都

研究口頭発表:第3会場

報告:和泉元 千春、 山中 都

 第3会場の1番目の発表は、堀井恵子氏による「留学生の就職支援のためのビジネス日本語に求められるものは何か」であった。堀井氏の発表は、留学生を「自国と日本の両方に精通し橋渡しとなることのできる人材(ブリッジ人材)」ととらえ、大学における留学生教育の出口としてビジネスジャパニーズ(BJ)を据える、非常に興味深いものだった。さらに、BJには、近年調査研究がさかんなアカデミックジャパニーズ(AJ)と同様の能力(知識、スキル、問題解決能力)が求められるとしながらも、そのシラバスや評価方法の開発には、産学連携が不可欠だとしている。堀井氏の指摘どおり、OPIの手法(特に超級レベル)も大いに活用できると期待できるが、どのようなトピックを取り上げるのか、またロールプレイの場合どのような場面を設定するのかなど、ビジネス場面のコミュニケーションを具現化するためには、さらなる調査、研究が必要であろう。このBJの成果は、留学生だけでなく、留学生を雇用する企業やこれから就職をする日本人にとっても有益なものとなるにちがいない。今後、さらに具体的な実践報告が待たれる。

 次に、稲熊美保氏による「日本語運用能力の向上と授受表現の習得―韓国人学習者の場合」の発表が行われた。稲熊氏は、韓国人日本語学習者による授受表現習得に関する4つの仮説検証をおこない、日本語授受表現の習得難易度(正用の産出順)は、本動詞の場合、@「もらう」→A「あげる」→B「くれる」の順に、補助動詞的用法は@「〜てあげる」→A「〜てくれる」→B「〜てもらう」の順に困難になると推測されると結論付けている。これは、現場教師の経験による認識を裏付けるものとして非常に興味深い結果である。さらに、OPIによる日本語運用能力の向上とともに授受表現を正確に産出し表現を豊かにしていくものの、中級から上級前半にかけて化石化する可能性がある点、超級レベルにおいても「〜てもらう」の習得が困難だと予想されるという点が指摘された。今後OPIのガイドラインを精緻化したり、教育に援用したりする場合に参考になる、非常に興味深い発表だった。

(和泉元千春 記)

 第3会場後半最初の発表は、石原千代枝氏による「助言に対する返答の仕方に関する一考察」であった。「助言」に対する否定的返答の仕方に焦点を当て、教科書調査及びアンケート調査を行った。その結果、「助言」に対し否定的返答を取り上げている教科書が少ないことが分かった。また学習者が「それはちょっと…」という返答が丁寧だと思っているのに対し、母語話者は場面や相手によっては丁寧さが損なわれると考えていることが分かった。

  2番目は、萩原孝恵氏による「〈雑談〉という活動の型で使用される接続詞−初対面・友人・親しい友人の雑談の比較から−」であった。人間関係が近いほうが接続詞のバラエティーが豊かになること、音の脱落などが起こることが分かった。

  最後は北川幸子氏による「タスク型ロールプレイを用いた授業−Independent Study Courseでの試み−」であった。学習者は事前に必要となる4つのリストを分担して作成してから授業に臨んでいたが、これが負担となるという事後感想もあった。また、今後は自由度の高い創造性の試されるロールプレイも行いたいという発表者のコメントもあった。

  石原氏と萩原氏の発表は、現実に近い日常会話を考えていく際の場面や表現形式上の参考となるものであり、また北川氏の発表は「タスク型ロールプレイ」の会話指導における意義を再考させてくれるものであり、現場の教師として大変興味深い内容であった。

(山中都 記)