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ACTFL言語運用能力基準−話技能(1999年改訂版)

("ACTFL Proficiency Guidelines - Speaking ; Revised 1999" 日本語訳)

 

 『ACTFL言語運用能力基準−話技能(1986)』は学習者の機能的能力、つまり各レベルの言語タスクを遂行する能力を測るための尺度として広く使われてきた。『ACTFL能力基準』は、米国政府機関における口頭テストの長年にわたる経験と、外国語教育を扱っている省庁の情報交換機関(ILR)が用いている言語運用能力の記述に基づいているが、アメリカ合衆国の学校教育(特に大学レベル)においての使用を目指して再編されたものである。このために、1982年の『暫定的言語能力基準』で、上の方のレベル(ILRにおける3−5)をひとまとめにし、下の方のレベル(ILRにおける0−1)の記述をもっと細かく分けて、初級学習者に慣れている語学教師や研究者の経験をもとに言語能力の下位レベルを定義した。この作業はさらに修正され精練され、1986年には『ACTFL言語運用能力基準』が出版された。

 その後の数年間にわたって口頭テストを実施し、能力基準を検討し続け、さらに数々の調査研究や学術論文を参考にし、議論をつみ重ねて、『言語運用能力基準』を再評価し、記述をより精密なものにするに至った。まず、話す能力に関する基準、続いて他の言語技能に関する基準を改定する。『言語運用能力基準−話技能』の改訂の目的は、ACTFL口頭能力テストの最近の訓練を受けていない人たちにとって、資料を以前の版よりもっと理解しやすいものにすること、試験官や教師の見解が割れていた問題点を解明すること、『ACTFL能力基準』の今までの版にある記述の中で、誤解されている可能性があると思われる項目を修正することにあった。

 重要な変更例が、超級レベルの取り扱いである。ILRの記述では、言語運用能力の範囲を機能的能力のないことを示す0から、教養のある母語話者と同等の能力を持つことを示す5までと設定している。『ACTFL能力基準』の方では、成人学習者が普通に得ることのできる言語レベルを考慮に入れ、ILR尺度における最上位の記述は入れていない。従って、ACTFLの超級レベルは、おおよそILRの3の範囲に相当し、超級のベースラインと見なされている。つまり、ACTFLの超級レベルの基準では、そのレベルに必要不可欠な機能的能力を示しているが、目標言語および目標文化の中で長年経験をつんできた、教養ある話し手が得るかもしれない言語活動の全範囲が記述してあるわけではない。この違いを念頭に置いておけば、ACTFL超級話者の能力がILR尺度における上位者の能力と同等でなければならないと思い込む危険性を減らすことができる。

 特にそのために、『言語運用能力基準−話技能』改訂版では、レベルを「下から上」へという順で提示する従来通りのやり方を捨て、「上から下」で示すことにした。この「上から下」へ示すアプローチには2つの利点がある。第一に、あるレベルにおける「−上」は、そのレベルよりも1つ上のレベルの方により緊密に関係していることを強調し、「−上」話者がそのレベルの機能が非常に良くできるだけでなく、1つ上のレベルの機能をもう少しで完成させるところまで来ていることを示すことができる。第二に、「−上」の話者は、1つ上のレベルの機能を持続した形では行なえないという点に触れるとき(これは必ず言及されなければならない事柄である)、記述の中で否定的表現を使ったり、上のレベルの特徴を繰り返し述べたりする必要が少なくなるという利点がある。

 1986年度版の『言語能力基準』に加えられたもう1つの大きな変更は、上級レベルを「−上」、「−中」、「−下」の3つの下位レベルに分けたことである。この決定は、運用能力の上級レベルにおける話者の上達をもっと細かく記述してほしいという、学術界・ビジネス界双方からの要請が高まっているという現状を反映している。「上級−中」と「上級−下」に関する新しい記述は、さまざまな言語におけるOPIテストで得た、数百の上級レベルのサンプルに基づいている。

 また、記述の提示の仕方についても、改訂版は初版とは多少違うアプローチで構成されている。各レベル(および適宜その下位レベル)について、詳細に解説する前に、レベルの輪郭を分かりやすく示すためにごく大まかな記述を載せた。それは、読者に各レベルの主要な特徴に注目してもらい、見やすい手引きとして役立ててもらうためのものであり、決して各レベルの解説の全容に取って代わるべきものではない。実際、下の方のレベルの場合、大まかな記述では、ベースラインの能力についてではなく、「−中」程度の能力について述べてある。そうしないと、下の方のレベルの場合、ごく限られた特徴しか示すことができず、そのレベル全体として期待されている事柄に関して、かえって誤解を与える恐れがあるからである。

 この『ACTFL言語運用能力基準−話技能』改訂版は、話技能における運用能力をより適切に記述するためのさらなる一歩として世に出されたものである。この改訂作業は、話し手の能力の特徴を明らかにしてきた、広範囲にわたる経験が生かされ、言語教育の分野におけるたゆまぬ討議や研究の結果得ることのできた、幅広い洞察に支えられている。しかし同時に、今後さらに明らかにしていかねばならない点や、もっと具体的に記述していかねばならいない点がいくつも残っていることも確かである。改訂委員一同、この改訂版が出たことにより、言語教育および語学テスト関係者にとって『ACTFL能力基準』が、これからさらに使いやすいものになっていくことを期待するものである。

謝辞
 ACTFLは、1986年度のオリジナル版『ACTFL言語運用能力基準』の作成に貢献された、Heidi Byrnes, James Child, Nina Patrizio, Pardee Lowe,Jr., Seiichi Makino, Irene Thompson, A. Ronald Waltonの各氏にお礼を申し上げます。今回の改訂版『ACTFL−OPI言語運用能力基準』はこの方々の功績の上に成り立っています。

 この最新版の能力基準作成の委員会のメンバーおよび本能力基準の改訂のプロジェクトに所属し貴重な時間をかけ専門的に見直してくださった、Lucia Caycedo Garner, Helen Hamlyn, Judith Liskin-Gasparro, Arthur Mosher, Lizette Mujica Laughlin, Chantal Thompson, Maureen Weissenreiderの各氏に心からお礼を申し上げます。

 最後にACTFLは『ACTFL言語運用能力基準』の編集を担当し、本書『ACTFL言語運用能力基準−話技能(1999年度版)』に掲載されている「解説ノート」を執筆してくださった次の方々に謝意を表したいと思います。

Karen E. Brener-Sanders
Pardee Lowe, Jr.
John Miles
Elvira Swender

『ACTFL言語運用能力基準−話技能』の改訂は、米国教育省国際調査研究プログラムの助成金を受けて行われた。

 超級

 超級レベルの話者は、正確で流暢な話し方でコミュニケーションをし、具体的抽象的双方の視点から、フォーマル/インフォーマルな状況でのさまざまな話題について、十分にしかも効果的に会話に参加できる。難なく、流暢に、しかも、正確さを保ちながら、関心のある事柄や特別な専門的分野について議論したり、複雑なことを詳細に説明したり、筋の通った長い叙述をしたりする。社会問題や政治問題など、自分にとって重要な数多くの話題について、自分自身の意見を明白にし、その意見を裏付けるために、うまく構成された議論をする。彼らは、別の可能性を探るために仮説を立てたり、その仮説を発展させたりすることができる。たとえ抽象的な詳述をする場合でも、不自然に長くためらったりせず、要点をわかってもらうために、必要に応じて複段落を展開する。そうした段落は、終始一貫しているが、その論理構成は、まだ目標言語より母語の影響を受けている場合もある。

 超級話者は、多様な会話ストラテジーや談話管理ストラテジーを使いこなす。例えば、ターンを取ることができるし、高低アクセント・強勢アクセント・語調などのイントネーション的要素や、適切な文構造および語彙を用いて、中心となる主張とそれを裏付ける情報を話し分けることができる。彼らは、基本的構文を使う場合、パターン化された誤りをすることは実質上ほとんどない。けれども、特に、低頻度構文や、公式なスピーチや文書に多く使われるような複雑な文型の高頻度構文の使用では、散発的な誤りをすることもあり得る。たとえそのような誤りをしても、母語話者である話し相手を混乱させたり、コミュニケーションに支障を来たしたりすることはない。

 上級の上

 「上級-上」の話者は、十分な言語的能力で自信を持って、楽に、上級レベルのすべての機能を遂行する。すべての時制の枠組みの中で、論理的に詳細を説明することができるし、完全で正確に叙述することができる。それに加え、「上級-上」の話者は、超級レベルで要求されるタスクにも対応するが、話題によっては、そのレベルを保ってタスクを遂行することができないこともある。彼らは、よく構成された議論を展開して、自分の意見を裏付けることができる。また、仮説を構成するかもしれないが、パターン化した誤りが見られる。彼らは、一部の話題については抽象的に論じることができるが、その話題は特に特定の関心事や特殊な専門分野に関係したものである。しかし、概して、さまざまな話題について具体的に論じる方が彼らには楽である。

 「上級-上」の話者は、言い換えたり、回りくどい表現になりながらもなんとか説明したり、例を挙げたりするなどのコミュニケーション・ストラテジーを自在に使いこなして、自分の文法的弱点や語彙不足を補う十分な力を持っているといっていい。彼らは正確な語彙やイントネーションを使って表現し、しばしば大変流暢に楽々と話す。けれども、さまざまな話題にわたって、超級レベルの複雑なタスクを遂行するように要求された場合は、時々言語的挫折を起こしたり、不適切さを露呈するかもしれない。または、全くそのタスクを避ける可能性もあり、例えば、議論や仮説を構成する代わりに、描写や叙述に終始して、平易な方法に頼るかもしれない。

 上級の中

 「上級 - 中」の話者は、多くのコミュニケーション・タスクを、楽に、また自信を持って扱うことができる。彼らは、具体的な話題であれば、ほとんどのインフォーマルな場面と限られたフォーマルな場面でのやりとりにおいて、活発に参加することができる。具体的な話題とは、職場、学校、家庭や余暇活動にかかわる話題はもちろん、最近の出来事、一般的話題、個人的な関心事、またはそれらに関連した話題のことである。

 「上級- 中」の話者は、会話の流れに柔軟に対応しながら、主な時制(過去・現在・未来)の枠組の中でアスペクトを適切に使って、詳細に叙述したり描写したりする能力を持っている。それらの叙述や描写は、関連のある事柄や裏付け、事実をつなぎ合わせたり、織り交ぜたりして、段落の長さの連続した談話の形でなされる傾向がある。

 「上級- 中」の話者は、自分がよく知っている日常的な状況での場面やコミュニケーション・タスクであれば、事態の複雑化や予想外の展開により言語的に難しい状況になった場合でも、比較的楽にそして上手に処理することができる。そのために、回りくどい言い回しや言い換えなどのコミュニケーション・ストラテジーがしばしば使われる。「上級- 中」レベルの話者は、上級レベルのタスクを遂行している間は、非常にスムーズな話し方ができるという点が特徴的である。彼らは、かなり幅広い語彙力を持っているが、自分の専門分野や興味のある特定の分野を除けば、彼らの語彙は一般的・総称的なものがほとんどである。談話構造は、依然として、目標言語以上に母語の口頭での談話構造に近いかもしれない。しかし、母語の影響は薄らいでいく傾向にある。

 「上級- 中」の話者は、具体的に論じ慣れた話題の数々について、かなり正確で明快で適切に会話に参加し、また、誤解や混乱を与えることなく意図した内容を伝える。彼らは、外国語話者に慣れてない母語話者にも容易に理解してもらえる。超級レベルで要求されるようなタスクを遂行したり、そのような話題を扱う場合は、質的・量的ともに、または、そのどちらかにおいて、一般的に言語レベルが低下するであろう。「上級 - 中」の話者はしばしば意見を述べたり条件に言及したりできるが、終始一貫して複段落で構成された議論をするほどの能力はない。そのため、「上級- 中」の話者は、数々のストラテジーを使って間を持たせたり、叙述・描写・説明・逸話を持ち出すなどの方法に頼ったり、単純に超級レベルの言語的要求を避けようとしたりすることもある。

 上級の下

 「上級-下」の話者は、さまざまなコミュニケーション・タスクを扱うことができるが、時々多少もたついた話し方になることがある。彼らは、インフォーマルな状況ならほとんどの場合、フォーマルな状況なら限られた場合に、学校、家庭、余暇活動に関係した内容について、活発に会話に参加する。また、程度は少ないが、仕事や最近の出来事、個人的、一般的な関心事について、または自分に関連のあることについても参加することがある。

 「上級-下」の話者は、主なほとんどの時制(過去・現在・未来)の枠組みにおいて、段落の長さの談話で叙述したり描写したりする能力を発揮するが、時々アスペクトをコントロールする能力に欠けることがある。彼らは、対応し慣れた、日常的な状況での場面やタスクであれば、事態の複雑化や予測せぬ展開により言語的に難しい状況になった場合でも、適切に対応することができる。ただし、時には、ぎこちない話し方になってしまい、上級レベルとして認められるぎりぎりの線まで落ちることもある。そのような場合には、言い換えや回りくどい表現を使うなどのコミュニケーション・ストラテジーが用いられるかもしれない。叙述や描写では、文を組み合わせたり、つないだりして、段落の長さの連続した談話が作られる。非常に詳細な説明を求められた場合は、言葉を探しながら話したり、極度に短い談話になってしまう傾向がある。発話の長さはせいぜい1段落止まりである。母語の影響がまだ色濃く残っていて、特に目標言語以外の同族言語の同意語を間違えて使ってしまったり、直訳的な表現や、母語における話し言葉の段落構造を用いてしまうことがある。

 「上級 -下」の話者は、たとえ流れるような発話でなくても、しっかりとした内容が認められるが、自己訂正が目立ったり、ある種の「文法的に粗雑な面」があって、概して何かしら不自然さやあやふやなところがある。「上級-下」の話者が使用する語彙は、主として一般的・総称的なものである。

 「上級-下」の話者は、相手を誤解させたり混乱させたりすることなく、自分が意図したことを伝えることができるだけの、十分な正確さ、明快さ、適切さを持って会話に参加できる。そして、繰り返しや言い直しをしたりしながらの会話になることもあるが、外国人との会話に慣れていない目標言語の母語話者にも理解してもらえる。超級レベルで要求される機能の遂行や話題を扱おうとする場合は、質的にも量的にも明らかに言語レベルは低くなってしまう。

 中級の上

 「中級-上」の話者は、中級レベルとされているごくありふれたタスクや社会的な状況では、楽に自信を持って談話を交わすことができる。彼らは、職場、学校、余暇活動、特定の関心事や専門的分野に関係した基本的な情報のやりとりが要求されるような、さほど複雑でないタスクや社会的状況なら多くの場合、うまく対応できる。ただ、明らかに口ごもったり、間違ったりすることもある。

 「中級-上」の話者は、上級レベルのタスクも取り扱えるが、話題が広がってくると、上級レベルの力を維持できない。「中級-上」の話者は、主な時制の枠組みを使い、段落の長さで連続した談話の形で、ある程度終始一貫して叙述したり描写したりする。けれども、彼らが上級レベルのタスクを遂行する場合は、言語的挫折の特徴を示すようになる。例えば、適当な時制の枠組みを使って、意味的や統語的に叙述や描写を維持することに失敗したり、連続した談話をまとめられなかったり、談話の結束法を誤って使用したり、語彙の広がりや適切さに欠けたり、回りくどい表現でもうまく言い換えできなかったり、言いよどんだりすることがその例である。

 「中級-上」の話者は、外国人に慣れていない母語話者に普通は理解してもらえるが、話者の母語の影響が依然として明らかである。(例えば、母語と目標言語を混用したり、同族言語を誤って使ったり、直訳的な表現をしたりするなど)。また、コミュニケーションが途切れることもある。

 中級の中

 「中級-中」レベルの話者は、単純な社会状況において、さまざまな複雑でないコミュニケーション・タスクにうまく対応することができる。会話は一般的に、目標文化圏において生活していく中で不可欠なもので、よくある具体的な会話のやりとりに限られる。その内容には、自分自身や家族、家庭、日常生活、関心事、個人的な好みなどの個人的な情報はもちろん、食べ物、買い物、旅行、宿泊などの身体的・社会的なものも含まれている。

 「中級-中」の話者の対応は、受け身的であり、例えば、直接的な質問や情報を求められたのに対して応えるという形で対応する傾向がある。けれども、道順、値段、サービスを尋ねるなどの基本的な必要を満たすために、簡単な情報を得る必要がある場合は、さまざまな質問をすることができる。上級レベルの機能を果たすように要求されたり、上級レベルの話題を取り扱うように求められたときは、彼らはある程度の情報を伝えることはできるが、考えを関連付けたり、時制やアスペクトを巧みに扱ったり、遠回しな表現で言い換えるなどのコミュニケーション・ストラテジーを使ったりすることは難しい。

 「中級-中」の話者は、自分なりに文を作ることによって、時には、すでに知っている言語要素と会話の中で得た情報を組み合わせたり組み替えたりすることによって、文または連文の形で発話し、自分の意図することを表現することができる。彼らは、思っていることを言おうとして適当な語彙やふさわしい文型を探しているとき、発話が途切れたり、文や語句を再構成したり、自己訂正したりすることがある。語彙・発音・文法・統語のいずれか、またはいくつかが正確でないために、誤解されることもある。けれども、「中級- 中」の話者は、普通、好意的な相手、特に母国語者でない人との会話に慣れている人には理解してもらえる。

 中級の下

 「中級-下」レベルの話者は、単純な社会状況では、自分なりに文を作ることによって、限られた数の複雑でないコミュニケーション・タスクをうまく遂行することができる。会話は、目標言語文化圏で生活していくためにはどうしても必要な、具体的な会話のやりとりや、いつも出てくるような話題のうちの一部に限られている。これらの話題は、基本的な個人情報に関係したもので、例えば、自分自身や家族、限られた場面の日常活動や個人的な好みに関する話題、また、食べ物を注文したり、簡単な買い物をするなどの日常の生活に必要なものなどである。「中級-下」レベルでは、話者は主として受け身であり、直接的な質問に答えたり求められた情報を提供しようとするので精一杯である。しかし、数は少ないが、適切な質問をすることもできる。

 「中級-下」の話者は、すでに知っていることと相手から聞いたことを組み合わせたり組み替えたりしながら短い文章を作って、自分の意図することを表現する。思っていることを言語に置き換えようとしているときは、適切な文や語句および語彙を探そうとして、何度も言いよどんでしまったり、努力しても不正確な話し方になったりすることが多い。彼らの発話は、頻繁に途切れたり、語句や文の再構成を試みても無駄に終わってしまったり、自己訂正したりするなどの特徴が見られる。発音、語彙、統語などは、彼らの母語の影響を強く受けている。しかし、誤解されて言葉を繰り返したり言い換えたりしなければならなくなることが多いとはいえ、好意的な対話の相手、特に母語話者でない人に慣れている相手であれば、普通理解してもらえる。

 初級の上

 「初級-上」の話者は、中級レベルのさまざまなタスクに対応することができるものの、そのレベルを維持できない。彼らは、単純な社会状況であれば、複雑でないコミュニケーション・タスクをうまく切り抜けることができる。会話内容は、目標言語文化圏で生活していくためにはどうしても必要なもので、よく出てきそうなわずかな話題に限られる。例えば、基本的な個人の情報、基本的な物、限られた数の活動・好み・身近な必要事項などである。「初級-上」の話者は、簡単で直接的な質問に答えたり、求められた情報を与えたりすることができる。しかし、何か質問するようにと言われると、決まり文句からなる数少ない質問しかできない。

 「初級-上」の話者が自分の意図することを表現する場合、習い覚えた語句をそのまま使ったり、それらの語句と対話の相手から聞いた言葉を組み合わせたりする程度で終わってしまうことがほとんどである。彼らの発話は、主に、現在形の短い文で構成されているが、それらも時には完結していないことがあり、口ごもったり、正確さに欠けたりすることがある。その一方、彼らの発話は、しばしば、習った言葉や記憶している句を展開しているだけなので、時々驚くほど流暢で正確に聞こえることもあり得る。自分の言葉として話そうとすると、語彙・統語はもちろん発音についても、母語の影響を強く受ける可能性がある。相手に誤解されることが多いが、語句を繰り返したり言い換えたりすることによって、外国語話者との会話に慣れている好意的な相手には、普通、理解してもらえる。中級レベルに相当する種々の話題・機能が要求される会話になると、「初級-上」の話者は、時々、明瞭な文で答えることができるときもあるが、文の形での談話を維持することはできない。

 初級の中

「初級-中」の話者は、数々の個別の単語と丸暗記した句を使って、習ったことのある場面に限り、最低限のコミュニケーションをやっとの思いで行うことができる。直接的な質問に答える場合も、彼らは一度に2、3の単語のみで発話するか、時折記憶している答えを発するだけである。彼らは、単純な語彙を探したり、自分自身や相手の言った言葉を繰り返し使おうとして、言葉がしばしば途切れてしまう。「初級‐中」の話者は、口ごもったり、語彙が足りなかったり、正確さに欠けたり、適切に答えられなかったりするために、外国人に慣れていて好意的な相手にさえ、理解するのが難しいことがある。中級レベルの機能を含んだ話題を扱うように要求された場合は、彼らはしばしば、語句を繰り返したり、母語を使用したり、沈黙したりせざるを得なくなる。

 初級の下

 「初級-下」の話者は、実際に何の機能も果たすことができず、発音の悪さから、理解されずに終わることもある。時間が十分に与えられ、聞き慣れたきっかけがあれば、挨拶を交わしたり、自分の名前を言ったり、ごく身近なよく知っている物の名前を挙げたりする事ができることもある。彼らは、中級レベルの話題を扱ったり機能を遂行することはできない。真の意味での会話のやりとりはできないということである。

『ACTFL-OPI試験官養成マニュアル(1999年改訂版)』 (牧野成一監修、日本語OPI研究会翻訳プロジェクトチーム訳、(株)アルク発行)
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