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OPIを授業に生かす 第5回

<解説・理論編 5>

OPIテープ判定の方法

齊藤 眞理子

 OPIテストにおける受験者のレベルは、インタビューの様子を録音したテープをテスターが聴いて判定します。そのためテスターには、録音された受験者の発話から、判定に必要な材料を見つけ、その内容を正確に判断する力が求められます。今月は、このテープ判定の方法について解説します。

 

1)OPIテープの判定における判定の信頼性

 テスターの資格を得る際にACTFLに提出する「練習用」テープおよび「テスター認定用」テープは、「抽出方法・インタビューの構成・判定の信頼性」の3項目により審査を受ける。なかでも、「判定の信頼性」は、テスター認定審査の中で、特に重要視される項目であるが、「抽出方法」や「インタビューの構成」が上手にできていなければ、当然、判定の結果にも信頼性が持てないことになる。

 それでは、テープを聞いて判定が行われる過程を具体的にみてみよう。

2) 発話サンプル判定のための原則

 インタビューで得られた受験者の発話サンプルを判定する際の原則として、「OPI口頭能力基準」には、以下の10項目が挙げられている。

(1) 判定は総合的に行われる。
(2) 判定は『ACTFL言語運用能力基準−話技能』に基づいて行われる。
(3) OPIは、規範中心ではなく、基準中心のテストである。
(4) あるレベルであると判定するには、多様な場面や話題領域などにわたり、そのレベルで要求されているすべてが維持されていなければならない。
(5) 受験者の長所(strength)のパターン、短所(weakness)のパターンを探すべきである。
(6) 言語的挫折をしたときの発話によって判定するのではなく、安定して産出された言語を判定すべきである。
(7) 基準となるレベル記述は、評価尺度上に目盛られた点ではなく、幅をもったものである。
(8) まず主要レベルの位置づけをし、次に、サブレベルの記述から発話サンプルの特徴に最も近いものを選ぶようにする。
(9) ある主要レベルで要求されている評価基準(例えば、過去形使用や敬語使用)について、概念上だけで理解しているレベルか、部分的にコントロールできるレベルか、全面的にコントロールできるレベルか、という観点から、主要レベル・下位レベルを決定する。
(10) 2つのサブレベルのどちらかで迷う場合は、レベルの低い方に判定する。

3) テープの聞き方

3−1)インタビューの構成はどうか

*インタビューの4段階が含まれているか

 OPIインタビューの4段階−導入部・レベルチェック・突き上げ・終結部−は、心理面・言語面・評価面からはっきりとした目的を持って行われているものである。そのいずれかが欠けているインタビューでは、受験者に無用な負荷を与えてしまい、十分に口頭能力を抽出することができないため、判定不可能となる。

3−2)抽出方法はどうか

*上限・下限ははっきり確定しているか

 テスターがレベルチェックや突き上げを十分に行わないと、上限・下限が確定できず、判定不可能なサンプルとなってしまう。特に上級・超級レベルの受験者を対象とした場合、テスターが受験者の話のペースに乗ってしまい、受験者にとって言語的な挫折感のないインタビューとなることがある。例えば、受験者の経歴を聞いているうちに共通の知り合いがいることが判明し、テスターがその人の消息について長時間尋ねてしまったり、受験者がテスターと同じ趣味を持っていることがわかり、意気投合し、単なるおしゃべりなのかインタビューなのかわからなくなってしまった場合などである。

 反対に、「突き上げ」を念頭に置きすぎて、初級・中級レベルの受験者を対象に難しい課題ばかりを与えてしまい、下限が十分に確認できない場合もある。受験者が安定して話している長い発話がなく、常に言語的挫折を起こしている場合である。  

*十分な話題領域にわたっているか

 中級では日常的な活動や自分の身の回りの事柄に関連した予測可能でかつ身近な話題、上級では個人的・一般的な興味に関する話題、超級では抽象的な話題を含む広範囲にわたる一般的興味に関する話題が、取り扱えるかを確認することが必要である。さらに、判定可能なサンプルを抽出するためには1つ上のレベルへの突き上げが必須となる。

 例えば、中級であると思われる受験者の場合には、予測可能でかつ身近な話題(中級レベル)だけでなく個人的・一般的な興味に関する話題(上級レベル)を取り上げ、どのくらいできるかを調べることが、サブレベルの判定に不可欠である。

 判定不可能となるテープには、上級・超級と考えられる受験者に対して具体的な話題で終始してしまい、十分な突き上げをしていないものが多く見られる。上級・超級と目される受験者には、抽象的な話題を取り上げ、意見の抽出を図るよう注意しなければならない。

 上級者・超級者は、自分の得意な話題にインタビューを誘導する場合がある。判定する際には、受験者に誘導されて聞き出した発話ではなく、テスターが選んだ話題によって抽出された発話を重視すべきである。受験者の「おはこ」についての発話は、総合的な判定のための信頼できるサンプルだとは言えないのである。

*発話サンプルは十分にあるか

 インタビュー自体が短い場合、突き上げ・レベルチェックが十分にない場合、テスターが話しすぎている場合には、十分なサンプルが得られない。

 テスターが受験者の話の内容に共感を表し、相づちを打ちすぎ、受験者の発話の文末を取る形で補ってしまったりすると、受験者がどのくらい自分の力で文を作り上げられるか見ることができず、判定不可能となってしまう。

 また、インタビューの中で、受験者に質問させる「逆質問」と呼ばれる部分で、受験者に対して真面目に答えようとするあまり、テスターが延々と発話してしまう場合がある。これでは、受験者自身の実質的な発話が少なくなり、よくない。受験者の中には、「日本語が上手になるにはどうすればよいですか」「外国人留学生についてどう思いますか」「人生の目標は何ですか」など、ひと言では答えられない質問を投げかけてくる人がいる。OPIはあくまでも受験者の発話能力を見るためのものなので、「私についての何か短い質問をして下さい」と指示するとか、「それはあとでお話しします」などと応対し、受験者が質問できるか、待遇表現が上手に使えるか、などを見ることを目指して、テスターの発話は最小限に抑える。

 判定可能な発話サンプルを抽出するには、人道的に進めることも大切であるが、これが試験であるということも忘れてはならないのである。

4) レベル判定の手順

4−1)主要レベルを絞り込む

 それぞれの主要レベルに必要不可欠とされる特徴を念頭において主要レベルを絞り込んでいく。まず、初級であるか、超級であるかという両極の検討から始める。「受験者は単語・語句・暗記した文に頼って話しているか(初級レベル)」と自問し、「そうではない」なら、次は「受験者は裏付けのある意見を述べているか(超級レベル)」と問う。この答えが「していない」なら、次に、「詳しい描写・叙述ができているか(上級レベル)」と問い、答えが「そうではない」場合、中級のみが残ることになる。

 もちろん、このようにすっきりと主要レベルを決められる場合ばかりでなく、主要境界線の上か下かで迷う場合があるかもしれないが、その場合には、再度、主要レベルで必要不可欠とされている特徴がどのような話題においても維持されているかを調べる。

4−2)サブレベルを決定する

 主要レベルの範囲が決まったら、超級以外は、サブレベル「−上」「−中」「−下」を決めていくことになる。サブレベルの「−上」は、1つ上の主要レベルのことをほとんどできるが維持できないレベル、「−中」は、一つ上の主要レベルの内容がときどきできるレベル、「−下」は、一つ上の主要レベルの内容がたまにみられるレベルである。さらに、『ACTFL言語運用能力基準』に記載されている各サブレベルの特徴に関する記述と照らし合わせ、判定を行う。

5) レベル判定のヒント

 ここで、主要境界線の上下で迷う例について取り上げよう。

5−1)「初級−上」か「中級−下」か

 「初級−上」か「中級−下」かの判定においては、抽出されたサンプルが暗記されていたものか、受験者が自分でその場で作ったものかの判断が必要となる。たまに、「自己紹介をしてください」「一日の生活を話してください」などという問いかけに対し、かなりまとまった長さの発話を示す受験者がいる。普通の単なる応答では自発性が見られないにも関わらず、突然、長いまとまった発話が見られるような落差が激しい場合には、長い発話があったとしても暗記したものと考えられ、判定の決め手としてはならない。

 また、「中級−下」であるなら、たまにではあるが、上級への突出がみられるはずである。

5−2)「中級−上」か「上級−下」か

 日本語教師は、学習者の文法ミスにどうしても目が奪われ、文法ミスが目立つ場合、低く判定しがちである。正確さはOPI全体の基準の一部を占めるにすぎず、また、文法はその正確さの中の一部分であることを忘れてはならない。判定においては、相手が描写・叙述している内容が全体としてこちらに詳しく伝わるかということがポイントになる。

 また、OPI全体の流れの中で、それまでのやりとりに比べて急によくできた段落がみられることがある。このような場合、受験者の「おはこ」の話題であることが疑われる。ただ1回、良質の段落があるからといって、それを根拠に判定をしてはならない。

5−3)「上級−上」か超級か

 超級と認められるためには、「裏付けのある意見を述べる」のみでなく、「反論されても、自分の主張をさらに構築できる」、「仮説を述べる」、「相手に応じて話し方を変えることができる」、「説得・交渉ができる」など種々の言語的側面の検討が必要である。

 どんなに正確に話せたとしても、話の内容に主張がない場合や、「考えたことがありません」「よく分かりません」とその話題について意見を述べることがない場合は、一種の言語的挫折と見なされ、超級とは認められない。

6)発話サンプルの記録の取り方

 テープを聞いて判定する際、より客観的に判定するためにテスターは多くの場合記録をとる。記録の取り方に決まった方法があるわけではなく、各判定者が分かりやすいように記録すればよいのである。ちなみに、私はノートを縦に3分割し、左に話題の流れ、真ん中に受験者の発話内容、右にテスターの質問を記入している。(図参照)

 特に、突き上げがなされた部分は、目印(例えば、上級への突き上げは↑、超級への突き上げは・)を付け、それに対して受験者がどのように答えたかを記す。そして、ある程度のまとまった発話が見られた部分は、括弧などでくくり、その内容が与えられた課題(例えば、何かについて詳しく描写する)を十分達成するものか否かを自分にわかる記号(例えば、○、△、×)で記しておくと、判定の際にわかりやすい。

 また、その受験者の特徴的な話し方が見られる部分で受験者の発話を細かく記しておくと、受験者にフィードバックするときに役立つ。

7)判定に関するその他の注意

 判定に際して、今まで述べたこと以外に、以下に挙げたことをしないよう、注意が必要である。

(1) 被験者の発話をほかの人のものと比較すること。
(2) 証拠がないのに早まった判断をすること。
受験者の職業・学習歴などを知っていると、受験者のレベルについての推測が生まれてしまい、判定が影響される場合がある。
(3) ウォームアップ部分の発話を根拠に判定すること。
(4) 受験者の発話を事実関係、情報内容によって判断すること。

 OPIに関する解説・理論編は今回で終わり、次回からは、現場でOPIがどう活用されているかという実践編に移る。

〔さいとう まりこ〕―文化女子大学