第2回OPI国際シンポジウム:ソウル(2003.8.20-21 韓国:建国大学)

プログラムソウルOPI国際シンポジウム
日時:2003年 8月20日(水)―21日(木)(22日:オプショナルツアー)
場所:建国大学校新千年館国際会議場(地下鉄2号線建国大学入口下車3分)
主催: 韓国OPI研究会(J-OPI-KOREA)/建国大学校教育研究所
助成: 国際交流基金
後援: 韓国日語教育学会/韓国日本学会/時事日本語社/在韓日本語講師研究会

2003年8月20日(水)
9:00 開場 受付
9:30-10:00 開会の辞: 建国大学校教育研究所所長・朴鍾明/韓国OPI研究会会長・櫻井恵子(仁荷大学校)司会:日本語OPI・嶋田和子(イーストウエスト日本語学校)
10:00-10:40 OPIについて 鎌田修トレーナー(南山大学)
10:40-11:35 OPIデモンストレーション1 斉藤真理子トレーナー(文化女子大学)
11:35-12:30 OPIデモンストレーション2 山内博之トレーナー(実践女子大学)
12:30-1:30 昼食(新千年館14階食堂)司会:関西OPI・長谷川哲子(大阪産業大学)
1:30-2:30 OPIデモンストレーション3(ビデオ)韓国OPI・朴恵成(ハンバッ大学校)
2:30-3:30 OPIデモンストレーション4(ビデオ) 韓国OPI・泉千春(西京大学校)
3:30-4:00 コーヒーブレイク 司会:関西OPI・奥野由紀子(横浜国立大学)
4:00-5:30 トレーナーセッション
 「韓国人テスターによるOPIについて」   鎌田修トレーナー(南山大学)
 「レベルチェックとは何か」  斉藤真理子トレーナー(文化女子大学)
 「突き上げの本質」 山内博之トレーナー(実践女子大学)
5:30-6:20 エンターテイメント「民謡を歌ってみよう」 黄シネ(清州市立国楽院 団員)
6:30-8:30 レセプション(千年館最上階ラウンジ)

2003年8月21日(木)
10:00-12:00 研究発表 司会:欧州OPI・黒川美紀子(元エディンバラ大学)
1.「ACTFL-OPIにおける質問の分析 ―上級―」 日本語OPI・深谷久美子(成蹊大学)/坂本悦子(専修大学)
討論者:山根智恵(山陽学園大学)

2.「日本語母語話者のOPI ―より明確な超級判定のために―」 
関西OPI・駒井裕子(京都外国語大学)
討論者:磯村一弘(国際交流基金シドニー日本語センター )

3.「中級話者への会話教育の指針 ―OPIレベル別特徴の分析から―」 
日本語OPI・荻原稚佳子(早稲田大学)
討論者:庄司惠雄(お茶の水女子大学)

4.「OPIを授業にどう活かすか ―目標と評価―」 
日本語OPI・伊藤とく美(横浜簿記テクノビジネス専門学校)
討論者:石田久美子(えひめJASL)

12:00-1:00 昼食(新千年館14階食堂)
1:00-2:30 研究発表 司会:関西OPI・池谷知子(大阪外国語大学大学院
1.「韓国人日本語学習者の使用語彙の分析 ―和語を中心として―」 
韓国OPI・稲熊美保(淑明女子大学校)/呉智恵(建国大学校)/菊竹恭子(東海大学)/斉藤麻子(明知大学校)/櫻井恵子(仁荷大学校)
討論者:河野俊之(横浜国立大学)

2.「OPIデータで見るケド文の習得 ―韓国語母語話者の場合―」 
関西OPI・清水昭子(立命館アジア太平洋大学)
討論者:遠藤藍子
(東京国際大学講師)

3.「1年間の留学前後のロールプレイにおける変化 ―約束変更のタスクにおける終助詞を中心に―」 
韓国OPI・奥山洋子(同徳女子大学校)討論者:鎌田美千子(宇都宮大学)

2:30-3:00 エンターテイメント「韓国舞踊」ソギョンメル舞踊団(団長:曺良叔・西京大学校)
3:00-3:30 コーヒーブレイク
3:30-5:00 全体討議 司会:日本語OPI・深谷久美子(成蹊大学)
5:00-5:30 閉会の辞

2003年8月22日(金)
第3トンネルリサーチツアー(大韓旅行社)
8:30 ロッテホテル(市内)出発 ~第3トンネル・ドラ展望台・昼食~
2:30 解散
開会の辞

韓国日本語OPI研究会会長 櫻井恵子(仁荷大学校)
このたび 第2回OPI国際シンポジウムをソウルで開催することができうれしく思います。7カ国から100人を超える多くの方々が参加して下さり、心から歓迎するとともに感謝の意を表したいと思います。この2日間 OPIに関心を寄せる人々が一堂に会して共に技術を研き、情報を交換し、ネットワークを作り、研究開発を進める実りのある楽しい時にしたいと思います。
  昨年は英国のエディンバラ大学において開催され、ヨーロッパの日本語教育に波紋を巻き起こしました。今年は韓国で開催することになり 韓国をはじめアジア地域の日本語教育に新鮮なインパクトを与えることができればいいと願っています。ここ韓国では2002年韓日ワールドカップ共同開催を契機として飛躍的に両国間の人びとの往来、接触が増えコミュニケーション能力の重要性が高まっています。また今年からコミュニケーション能力の向上を目標とする第7次教育課程に基づく高校の日本語教育が本格的に実施されようとしています。このような時にOPI国際シンポジウムがソウルで開催されるのは時に適ったものであると思います。
 このシンポジウムの開催に際しては多くの方々のご協力、ご支援を受けました。 トレーナーの鎌田修先生をはじめ斉藤真理子先生、山内博之先生にはいろいろアドヴァイスをいただきました。東京の日本語OPI研究会の荻原稚佳子さん、関西OPI研究会の池谷知子さんは各研究会のメンバーのご連絡、取りまとめをして下さいました。司会や討論者を快く引き受けて下さった各研究会のメンバーにも感謝いたします。建国大学校教育研究所の朴鍾明教授をはじめ建国大学の先生方、大学院生に感謝いたします。助成をしてくださった国際交流基金、後援をいただいた韓国日語教育学会、韓国日本学会、時事日本語社、在韓日本語講師研究会にもこの場を借りまして謝意を表したいと思います。そして各持ち場で上限まで能力を発揮して頑張ってくれた韓国OPI研究会のメンバーに感謝する次第です。
2003年8月20日
報告1 ソウルOPI国際シンポジウムに参加して

駒井 裕子
8月20日、21日、韓国ソウル市建国大学校新千年国際会議場にてOPIの第2回目国際シンポジウム、「ソウルOPI国際シンポジウム」が開催されました。
 日本語OPI研究会、関西OPI研究会から約50名、ソウルだけでなく韓国各地から約50名、中国、イギリスからの参加者も集い、100名を超えるにぎやかなシンポジウムとなりました。建国大学校はソウル市内の東部に位置し、地下鉄の駅からも近く、緑あふれる自然の豊かな総合大学です。シンポジウムの会場に使わせていただいた千年会館は14階建ての近代的なビル。地下のホールでのシンポジウム、最上階食堂での昼食やレセプションもとても快適に過ごさせて頂きました。お国柄、コンピューターやOHPが突然使えなくなるかもと、奥山先生に脅かされていたのですが、充実した設備とお手伝いくださった建国大学校の学生さんたちのおかげで全くトラブルのないすばらしいシンポジウムでした。
 初日は、櫻井先生からの開会の辞、建国大学校教育研究所所長朴鐘明先生のご挨拶をいただき、韓国での日本語教育や外国語教育の現状などを聞くことができました。続いて、まずOPIに詳しくない参加者の方もいらっしゃったので、鎌田先生からOPIの概説、利用状況などのお話がありました。齋藤先生、山内先生のデモンストレーションは、協力くださった韓国人日本語学習者の方のレベルも高く、参加者全員で行ったレイティングについても多数の意見が活発にでました。齋藤先生の優しい語り口の中の厳しいつっこみ、山内先生のさりげないトリプルパンチ、たくさんのテクニックを盗ませて頂けました。
 午後は、韓国で教えていらっしゃるノンネイティブテスターである朴蕙成さん、通訳会社を経営する被験者の方のOPIをしてくださった泉千春さんのビデオによるデモンストレーション。音声だけでないノンバーバールな面をどう考えたらいいかという参考にもなるOPIでした。続くトレーナーセッションもこれから日本語OPIを広めるには欠かせないノンネイティブテスターの持つ問題を鎌田先生がお話になり、次に、今日からすぐに役立つ齋藤先生、山内先生の実践的なお話、充実した内容の濃いセッションでした。
 1日目のお楽しみは、黄シネさんによる「韓国民謡」の披露と指導。スリムなシネさんのどこからあんなに力強い声が出るのかしらと感心する強い張りのある歌声でした。せっかくシネさんが民謡を2曲指導してくださったのですが、疲れていた私たちは、あまり熱心な生徒にはなれませんでしたね。夕食をかねた新千年会館最上階ラウンジでのレセプションも、韓国料理をいただきながらの楽しい一時でした。
 2日目午前は、日本国内からの参加者による研究発表。熱海シンポジウムやエジンバラシンポジウムの続きにあたる発表も多く、テスターの皆さんの熱心な日頃からの研究が発表されました。また研究発表後は、自由な質疑応答ではなく、前もってレジュメなどを読んでおいた討論者がまず質問するという形式で、発表についての深い質問などもなされ、なかなかおもしろいシステムだと感じました。
 午後は、韓国で教えていらっしゃる先生方の発表と韓国人学習者に関係する発表。こちらも討論者から、また会場から活発な意見や質問がだされ、午前の発表も午後の発表も、もっともっと討議の時間が欲しい意味のある発表・議論が続きました。
 その後、ソギョンメル舞踏団のみなさまによる「韓国舞踊」。宮廷の踊り、学者階級にあたる男性の踊り、力強い女性の長剣舞、妓生の踊り、太鼓を使った踊り、と5種類の全く異なる舞踏を見せて頂きました。どの踊りも、その衣装の美しさに目を奪われ、また日本舞踊とは全く違う優雅な足の運び方にうっとり見とれてしまう30分間でした。
 最後の全体討議では、OPIはタスクの達成がまず重要である、超級は敬語使用が必須、ロールプレイは2種類必要、というようなことが確認されました。
 残念なことにお天気には恵まれなかった2日間でしたが、内容の充実したすばらしいシンポジウムでした。櫻井先生、稲熊先生、奥山先生を始めご準備、当日の運営に当たってくださった韓国のみなさま、本当にお世話になりました。わずか10名程の韓国OPI研究会の方が中心になって運営頂いたとか。お食事、茶菓などのお心遣いも万全で、頭が下がるばかりの2日間でした。本当にありがとうございました。
報告2 研究発表に関する報告

金庭 久美子
 シンポジウム第2日目は、日本と韓国の会員による7つの研究発表が行われた。このシンポジウムでは韓国スタイルで指定討論者が決められており、各発表の後、まず討論者から質問があった。その後、会場の参加者からの質問の時間が設けられた。
 午前の部の1番目は、日本語OPIの深谷久美子氏による『ACTFL-OPIにおける質問の分析-上級-』であった。研究はインタビューの「話題」とその「質問内容」を2つの方法で試みられた。一つは、テスターの各質問内容の抽象度(易しいものから難しいもの)を「0~3」の4つのレベルに分類し、インタビューを時系列に「蛇の目スコープ」で示した。二つめはインタビューの話題の出所をテスターと被験者の談話の流れを通して分析したフローチャートである。その結果、抽象度を測りながら質問をスパイラルに行っていること、いいサンプルを引き出すための効果的な質問の仕方を意識的にする必要があること、被験者の発話を利用したリサイクル質問が有効であることなどがわかったとしている。
 2番目は関西OPIの駒井裕子氏による『日本語母語話者のOPI-より明確な超級判定のために-』であった。10代~40代の日本語母語話者の発話データをもとに、1)正確さ、2)場面・話題、3)テキストの型、4)総合的タスク・機能の4つの観点から評価した。特に、3)と4)の2点において、20代前半までの母語話者の中には、複段落が困難な者、裏付けのある意見や待遇表現が十分にできない者がいることがわかったという。討論者より裏付けのある意見を述べさせるための突き上げ方、待遇表現の場面設定方法等について指摘があり、午後の全体討議の時間でも再び超級判定について活発に意見が交わされた。
 3番目と4番目はOPIの授業への活用法である。日本語OPIの荻原稚佳子氏の『中級話者への会話教育の指針-OPIレベル別特徴-』では、中級話者の会話指導に際し、準段落から段落にし、誰にでも聞きやすい話者にするために、テーマの統一、内容の充実等を求め、時系列的展開で話させる、フィラーの使用や聞き返しのストラテジーを促すこと等が必要であるとしている。また、日本語OPIの伊藤とく美氏の『OPIを授業にどう活かすか-目標と評価-』では、まとまった話にするための具体的な質問の仕方、スピーチの指導法などについて映像や音声とともに実例が示された。
 午後の部は、まず韓国OPIグループ(稲熊・呉・菊竹・斉藤・櫻井)が、和語を中心とした『韓国人日本語学習者の使用語彙の分析』について発表した。和語は日本語能力試験の4級の語彙が一番多く使用されるが、特に中級上以上で、2、3級の和語が増え、また、上級以上は副詞の占める割合が大きくなるということである。
 次は関西OPIの清水昭子氏の『ケド文の習得-韓国語母語話者の場合-』であった。ケド文の習得順序について5名を対象に4学期にわたり縦断調査したところ、ケド文は初級上から表れ、レベルが上がるにしたがい、聞き手への配慮として現れる前置きや挿入などが多く使用され、同一発話内でのケド文の重複が見られるようになったということである。
 最後は、韓国OPIの奥山洋子氏による『1年間の留学前後のロールプレイにおける変化』で、留学前と留学後の親密体における終助詞の種類と頻度の変化を見た。その結果、留学経験者はどのレベルの学習者も終助詞の種類と数を増やしていることがわかり、今後の終助詞の指導について提案があった。
 どの発表も日本語教育に携わる者にとって興味深い内容で、大変有意義な研究発表会であった。今後OPIのインタビューや会話教育に応用していきたい。
報告3 トレーナーセッションの報告

有澤 田鶴子
 
 

 
 第1日目、午後のトレーナーセッションでは、3人のトレーナーからそれぞれ興味深い内容の発表がなされた。紙面の都合ですべてをお伝えできないのが残念であるが、最終の質疑応答まで、熱い熱気に包まれたあっという間の1時間半であった。
 第1番目の鎌田修氏は「韓国人テスターによるOPIについて」と題して、非母語話者のテスターに焦点を当てた。非母語話者がテスターになるにはかなりードルが高いことが予想され、まだその数は多くない。非母語話者がOPIを行うに当たってどんな問題点があるか、また利点があるか、またOPIを始めた背景や取得後の状況なども含めてアンケート調査を行うことによって、その現状を明らかにしようと試みた。シンポジウムではアンケート調査(今のところ、非母語話者テスターの中で韓国人テスターの占める割合が大きく、この調査も韓国人テスターのみからの回答となっている。)の結果を紹介、これらを調査することで、非母語話者テスターの増加を望むとともに、OPIの質のさらなる向上を目指している。我々のチェックしている日本語表現とは何なのか、ネイティブスピーカーとは何なのか、という問いかけがなされた一方、同氏は日本語教育におけるノンネイティブの可能性に期待を寄せている。
 次に齋藤真理子氏は「レベルチェックの重要性-中級の質問-」というタイトルで、レベル抽出のポイントを、そして中級に焦点を当て、どのようにすればレベルチェックがうまくいくのかを具体的に示した。まず各レベルでできることを抽出するための代表的な質問を提示、つぎにunratableと判定される主な理由を、抽出法、構成、レベル判定の信頼性の3つの観点から詳しく説明。また、中級下の抽出がなされているインタビュー会話を、3つに分け、ウォームアップ部分ではレベルチェックを十分に行うこと、中盤部分では話題を変えるときには元のレベルに戻しレベルを確認すること、終結部では安定して話せるレベルに戻して気持ちよく終わることなど注意点を挙げている。中級レベルでよく取り上げられる話題、中級レベルのインタビューで要求される連続した質問例も示され、最後に、下のレベルで十分に発話を抽出するために、Yes/No質問の効用、相手の答えを繰り返す、共感を示す「ね」、しっかりと待つ、あいづちを打つ、などの具体的な手法が紹介された。
 ラストの山内博之氏は、「突き上げのコツ-上級と超級の質問-」と題して、突き上げの方法、またどのようにすればその能力がつくのかを具体的に示した。まず上級、超級の機能と質問の型を結びつけることを文例を示して提示。テスターが反論する時も根拠を述べることが大切で、これはテスターも超級的に話すことが要求されている。突き上げを厳しくするコツとして、機能だけでなく話題に気を配ることが挙げられている。上級への突き上げは話題の「詳細性」を、超級への突き上げは話題の「抽象性」「一般性」を高めることで、それぞれ難易度を変えた2種類の質問が具体的に示された。OPIは動的なものであり、突き上げをする能力とは状況に応じて瞬時に適切な質問をする能力であると定義。この中で、氏は「予定力、誘導力」という能力を提案している。これはひとつの話題でどれくらいの(突き上げの)質問の文が浮かぶかといった能力で、日頃からこれを磨いておくことが突き上げをうまく行えるようになることにつながるとしている。
報告4
全体討議報告

狩谷 洋子
 シンポジウム第2日目の午後、研究発表に続いて全体討議が行われ、参加者からの質問に対し、3人のトレーナーが回答した。質問は、超級に関するものが多く、フォーマル・インフォーマルについて、裏付けのある意見の抽出、それに伴い、文化能力をどう捉えるか、などであった。
 まず、フォーマル・インフォーマルについては、はっきりと表れていなくても超級とみなされるか、又は会話の中でフォーマルが出ていればロールプレイ(RP)で確かめなくてもよいか、との質問に対しては、マニュアルに超級話者は敬語ができると記載されている(齊藤氏)、会話の中で出ていたとしてもRPで確かめる必要がある(山内氏)、との回答。そのマニュアル記載について、マニュアルに記載されていない部分での解釈、つまり日本語OPIの場合、違ったスピーチレベルの話し方ができればいいというのではなく尊敬語・謙譲語が使えなければいけないということを共通認識として明確にしてほしい、との質問に対し、マニュアルは汎言語的に使えるものだから個別のものに関しては記載されないが、これは今後の課題であろうとの回答であった。
 次に裏付けのある意見の抽出についてであるが、回りくどい言い方のため結果的に論点がぼやけてしまった場合の判断、被験者が関心、興味がない、或いは深く考えないタイプで簡単な意見しか言えない場合の判定についての質問には、その場合は超級とは言えないとの回答。被験者の十八番にならない程度での関心のある話題で話させること(齊藤氏)、スパイラルに突き上げることの大切さ(山内氏)が指摘された。又、回りくどい言い方についてはタスクが遂行できたかどうかが問題であり、回りくどいために論点がぼやけ趣旨が曖昧になれば当然レベルは下がる(鎌田氏)。
 一方、文化能力については、実は一般的日本人は意見を述べる際、回りくどい言い方をするし依頼する際はっきりとは頼まないのではないか。更に謝る場面のRPでタスクは遂行できたが失礼だという場合の判定はどうするのかという質問に対し次のような回答があった。基本的にはOPIにおいては文化能力は排除されているが、RPで謝る場面で失礼な印象を与えた場合、社会言語的正確さから判断しあまりに失礼なものは別として、それが失礼かどうかの判断は日本人同士であっても印象には個人差があるので難しい問題である(山内氏、齊藤氏)。文化能力には異文化共生と、異文化同化という二通りの考え方がある。ステレオタイプ的なイメージを持つことがいいのかどうか。又、かなりの研究をしない限り文化の基準を作るのは難しい(鎌田氏)。
 このほか、OPIの信憑性について、又OPIのための訓練は可能か、という質問に対して、OPIは話題が設定されているわけではないから訓練はできない。評価についてはアナログ的評価であり点数評価でないからある程度のずれが生ずる可能性はある(鎌田氏)。「レベルを決める決定的要素とは」の質問に対し、そのレベルで必要不可欠なものができているかどうかが決め手(齊藤氏)、タスク遂行と正確さに気をつけると共に細部を見つつ全体像を把握することがポイント(山内氏)、そして、レベル決定の際に葛藤は付き物との回答。このように超級インタビューの際すぐに役立つような実践的な討議が繰り広げられた。
 最後に鎌田氏より、来年、プリンストンで行われるシンポジウムの紹介、そして、再来年の会場の候補地として函館が提案され、2日間にわたるソウルOPI国際シンポジウムのプログラムを終了した。